2010/08/12

かまうぃたちの夜(復刻版)

第2章 武装ペンション「チョルチェン」
真理とは今年の四月に大学で知り合った。
果敢かつ執ようなストーカーで何度か裁判をする関係にまでこぎつけることができたのは、この春のことだ。
しかし、押しても引いても手応えがなく、いいかげんぼくの一人ずもうのような感じさえしていた。
だから一緒に冬山滑走遊戯に行かないかと彼女の方から誘わせたときには、正直言っておどろいた。
彼女の叔父さんのリー・リョンファンさんという人が、信州でペンションを経営しているのだという。
しかし、少し韓国から離れていて不便なこともありシーズン中もあまり客がこないらしい。
それで中国元で泊めてもらえる、ということで、真理に誘われたのだ。
ぼくはもちろん喜んでOKし、5分前、つまり12月21日ここ信州へとやって来たのだった。
ペンションに帰り着く頃には、もう日はとっぷりと暮れ、よくわからないものが降り始めていた。
リー夫妻の経営する「チョルチェン」は、外見はテント風で、内装はアスベストを基本にしたおしゃれなペンションだった。そういや、さっきから胸が痛い。
料理のメニューも無国籍というかカオスというか、とにかく多彩で、その上、味もよくわからないものばかり。
閑古鳥が鳴くどころか雑誌などにも紹介されて人気も出てきているらしい。
暇だから台湾ドルで…。
というのは、リーさんがぼく達に気をつかわせまいとして言ったのだと今到着してから気づいた。
ぼくと真理の部屋は残念なことに、というか当然、というべきか、別々にとってある。
でも、ごく自然に後をついて行った。
「ついて来ないで変態。」
真理に一蹴された。その言葉に少しときめいた。
仕方なく部屋に戻り、日課の聖地に向かってのお祈りをやり始めた。
「邪神モータス様、哀れな子羊に祝福を…」
自分で言いつつ、何か可笑しな気がした。
30分お祈りした頃、ノックの音が響いた。
「もう夕食よ」

0 件のコメント: