2009/09/02

かまうぃたちの夜(13)

第13章 黒猫
例によって、感電したリーさんに閃光弾を持たせ、ドアの向こうへ押し込む。
激しい閃光と音が響いた瞬間、どんと音がしたかと思うと、ドアが勢いよく開いて黒い影が飛び出してきた!
『ニャァオオオオォォッオォ!!!!』
「・・・・・猫だ」
「ありゃ、ジェニーだ。こんなとこにいたのか」
クボータさんが言った。
「ジェニー?」
「ここで飼っている猫だよ。見かけないからどこに言ったのかと思ってたんだ。こんなとこに入り込んでたとはね」
続いてリーさんと、見知らぬ人が倒れ込むように飛び出してきた。
「失礼ですけど、どちら様ですか?」
ぼくは念のため、聞いてみた。
「ぁを、あ、怪しいものではありません。 窓に細工して、割れるまでの間に下山しようとして、あまりにも寒かったのでここに入ってた者です。」
「あ、なんだ。 予約なしで泊まろうとしている方でしたか。 リーさん、お客さんですよ。もう、部屋はないんですか?」
談話室に戻りつつ、僕はフラフラのリーさんに聞いた。
「あとはワイン蔵だけだけど、あそこは窓とか浴室とかないからね。それでいいなら、泊まってください。」
リーさんはちょっと考えてから答えた。
「なんや、結局おらんかったっちゅうことか。残念やな。せっかくわしのネガに面白顔を焼き付けてやろうと思っとったのに」
香山さんは悔しそうにカメラをポケットに入れる。
それ、デジタルの方じゃなかったんだ。
談話室に戻ると、今日子さんがかき氷にコーヒーをかけていてくれていた。
例によって床に散らし、ミッキモーさんがよつんばいになって喜んで食べ出す。
「誰もいなかったのね」
真理が僕たちの表情を読み取って言う。
「結局、外に逃げたって言うことなのかしら」
「だろうね」
クボータさんが答えた。
みんなほっとしたような、それでいて不安げな、複雑な表情を浮かべている。
そりゃそうだろう。
とりあえず危険なことはなかったものの、本当に誰も隠れていないとは、まだ確信できない。
それに、今いなくても、夜中に入ってくるかもしれない。
いくら戸締りをきちんとしたところで、窓を割れば簡単に入ることができるのだ。
「そういや、新たに味方が一人増えたよ。 さっきまでシェルターに入ってたらしいんだ」
ぼくは、さっきの男を紹介した。

0 件のコメント: