2009/08/21

かまうぃたちの夜(9-3)

第9章 鳩のなく夜
(3)
香山夫妻、ミッキモーさん、そして女の子三人組もそれぞれの部屋から出て来る。
その顔を見れば、何もなかったらしいことは読心術の心得があるから分かる。
やがてぼくの部屋を調べていたらしいリーさんも、ぼくのシャツを着て廊下に出てきた。
「みなさん、異常ありませんでしたか?・・・・・・とすると、後は一部屋しかないな。」
そういって、ある扉を見つめる。
あの変質者のような男の部屋なのだろう。
ぼく達は自然とリーさんを取り巻くように立っていた。
それより、ぼくの「牛肉反応センサ付き」と書かれたシャツを何で着てるの?
あの変態の部屋から牛肉の匂いがするの?
「そういえば、あの脅迫状、もしかしたらあの人が書いたのかもね。」
真理が、ぽつりともらす。
「どういう意味?」
「この部屋でこんにゃくを外気にさらしてるのかも・・・・・・」
他の人達には聞こえないよう、手話で語る。
みんなに注目されているのに、なぜに手話・・・・・・?
「まさか。それに、まだ9時過ぎだよ? あの脅迫状じゃ、予告時間は12時じゃないか」
「そうだけどさ。だいたい犯行予告なんてのは、天気予報と同じで、大体こんな感じですって出すものでしょ。透、カシスオレンジとか飲んだことあるでしょ?」
こいつ、何言ってんの。
「お客様!出てこい変態!」
リーさんは、取り立て屋のようにガンガンと、扉を強くノックした。
しばらく待つが、返事はない。
耳を澄ましていると、中から何かが風であおられているような音がする。
「おい、お客!」
リーさんはガンガン扉を蹴りだしたが、やはり返事はなかった。
「やっぱりうちの子に何かあったみたいですね。」
ぼくは言った。
言ってて何かおかしいと感じたが、まぁ良いとしよう。
リーさんはうなずくとぼくの手を握る。
「だめだ。 心の鍵がかかってる。」
リーさんはちょっとだけためらったが、やがてぼくの服を脱がし始めた。
ブチりと堪忍袋の緒が切れて、ドアごとリーさんを蹴飛ばした。
「失礼します」
リーさんはベッドのあたりでうずくまりながら、一応そう言った。
が、室内を見た途端、その部屋がおかしいことはみんなに分かった。
ドアのあったところから、ひどい冷気とともに、一陣の風がぼくたちの間を吹きぬけたのだ。

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