2009/08/26

かまうぃたちの夜(11-1)

第11章 犯人は誰だろう
警察だ!
そんな当然のことに、今までぼくは気がついていなかったのだ。
あまりに激しいなものを見せられたせいで、普段の思考ができなくなっていたようだ。
それはリーさんも同じだったらしく、慌てた様子で奥に消えて行くと、紙コップと糸を持って帰ってきた。
糸を柱にくくりつけ、紙コップとつなげて耳に当てる。
しかし、すぐに糸をピンピン弾いて振動させ始めた。
「駄目だ。何も音がしない。警察署まで糸が通じてない!」
「な、なんやて!」
香山さんは立ち上がって叫んだ。
「そら困るで!」
「多分、どこか途中までしか糸が届いてないのでしょう」
リーさんは音のしない紙コップを、憎々しげに見つめている。
こいつら、早く何とかしないと・・・・・・!
どうすれば一般常識を彼らに教えることができるか、考えがまとまらなかった。
糸電話しかないということは、明日になり、吹雪がやまない限り、警察に連絡できない。
・・・・・・だけでなく、バイト先に連絡することもできないということだ。
香山さんは突然、笑い出した。
「あ、そや。わし、紙とビンがあるんや。あれをつこたらええわ」
しかし、リーさんはにべもなく言った。
「無駄ですよ。香山さん。 このあたりは川や海のような流せるものがないんです。雪崩に乗せない限りは使えません。」
いや、それ以前に警察に届くのは何年先だって突っ込めよ。
「そ・・・・・・そしたら、一体どないしたらええんや。人に糸コン突き刺す殺人コン使いがこの辺りうろついとるっちゅうのに」
殺人コン使い・・・・・・。
その言葉に、ぼく達は虚をつかれたような思いだった。
糸コンの束に気を取られ、あれがまぎれもなく名もなき変態に突き刺す高等技術であることなど考えもせず、カマウィタチだのプラズマだのと騒いでいたのだ。
いや、わざと考えないようにしていたのかもしれない。
しかし、あれが事故や自殺であろうはずがない。
殺コン法だと考えるのが一番自然だ。
あ、いや、やっぱり不自然か。
誰かが、変態の蝶ネクタイを取り、それを糸コンに巻いて頭に刺したのだ。
そして香山さんのいうとおり、この天候を考えると、その犯人はまだこの辺りにいる可能性が高い。
「この天気で、山を降りることはできますか?」
ぼくが尋ねると、リーさんとクボータさんがほとんど同時に首を振った。
「無理だろ」
答えたのは、クボータさんだった。

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