第10章 マネキンをコート掛けのように
(2)
「そう・・・・・・だと思います。 形が全然違うから、よくわかんないけど、あの変態に突き刺さってたのは糸コンだったと思います」
突然、グリーンさんは目を細めた。
「それってもしかして、建設現場で使われる工事用糸コンだったんじゃないの? それともあの変態さんは、食用糸コンで殴られたの?」
「人間が食用糸コンで死ぬわけありませんよ」
僕は糸コンの断面がのぞいていたのを思い出し、身震いした。
「でもさー、映画なんかのアニメ技術って最近、すごいじゃない? ベッドの上のコニャっていうやつなんか面白いじゃないの」
何言ってるのか全然わからないが、だんだん自信がなくなって来る。
「・・・・・・あれはベッドの上の変態だ。 間違いない。蝶ネクタイで束ねられた糸コンが突き刺さってた」
リーさんが断言すると、可奈子さんはまた声を上げた。
「やっぱりあの脅迫状はほんとだったのよ!あたし帰りたい!」
こいつらの話がかみ合ってない事には誰も触れなかった。
「そういえば・・・・・ぼく、聞いたことがあるよ。 ・・・・・かまうぃたちのこと」
ミッキモーさんが、唇にリップを塗りながら話し出す。
「かまうぃたち?」
ぼくは聞き返した。
「あぁ、知ってるだろ? このあたりでは昔から、何もないところで突然服が切り裂かれたり、半裸になったりすることが知られていたんだ。 土地の人達は、すっげぇエロいイタチ野郎のしわざだと考えて、かまうぃたちと呼んだ」
ミッキモーさんは低い声で話すと、ぼく達の顔を見回した。
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