第11章 犯人は誰だろう
(2)
「さっきミッキモーさんがたどり着いたのだって、奇跡みたいなもんだよ。 歩いて降りたら途中で凍死、車だったら運がよくても沢に転落。運が悪けりゃ沢に転落しかない。 だから、非常用に脱出路を毎年雪の下に掘ってるんだけど、麓まで掘る前に雪が溶け出すんだ。」
「じゃあ、犯人は、このペンションの中に隠れようとするんじゃないでしょうか? 生き延びる為それはないでしょう?」
全員が息を呑んだ。
泣いていたミッキモーさんでさえ、一瞬泣き止んで恐怖の表情を見せた。
クボータさんは怒ったように立ち上がる。
「じゃあ・・・・・・じゃあ、何か? 俺が麓まで脱出路を掘らない限り、安心できないってのか?冗談じゃない!」
「そらそうや。人殺しがおるかもしれんっちゅうのに安心して堀り終えるん待ってられへん。何とかせな。」
香山さんも、大きくうなずく。
「何とかって・・・・・・どうするんです」
リーさんが当惑した様子で聞き返した。
「そら、こっちも糸コン殺法を覚えるしかないやろ。警察に来てもらえん以上、自分らで身を守るしかないやないか」
「ちょ、ちょっと待ってください。」
見かけによらず情けない声をだしていたのはミッキモーさんだった。
「あんな柔らかいものを人の頭に突き刺す殺人コン使いですよ? 下手に手を出すより、ここでみんなでじっとしてた方がよくありませんか? これだけ人数がいれば、どんな凶悪犯だって、手出しはできないでしょうし・・・・・・」
「じゃああんたは、このままここでずうっと起きとけっちゅうんかいな。寝とる間に、こんにゃく投げられるかもしれへんのやで」
香山さんがとんでもないことを言い出すものだから、女の子達はポン酢片手にますますヨダレを垂らした。
ぼくは慌てて口を挟んだ。
「いや、お化け屋敷でもこんにゃくは定番ですけど、投げはしないでしょう。 冷蔵庫のこんにゃくだけはしっかり処分しておく必要があると思いますけど・・・・・・。」
「処分ったって、もう持ち出されとったらしゃあないやないか」
「まさか! 一体いつ持ち出したって言うんです?」
リーさんは驚いて声をだした。
「そんなことわしゃ知らん。 そやけど、現にこんにゃく凶器に人殺されとるやないか。わしらが気づかんうちに、持ち出したっちゅうことやろ?」
「でも・・・・・・でも・・・・・・」
リーさんは幸せの青い鳥を探して天井を見る。
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